小児整形外科の専門外来

子どもは成長段階にあることから、子どもならではの整形外科疾患を患うことがあります。当科では、赤ちゃんが生まれた時から持っている先天性疾患をはじめ、小学校卒業頃までにかかる整形外科疾患を幅広く診ていきます。大人の体になる18歳くらいまでは、スポーツ外傷も含めて小児整形外科の対象です。小児整形外科は、症状によって手術や特別なケアが必要となる場合があります。当院は町のかかりつけ医として、初めの鑑別診断や経過観察を担い、必要に応じて千葉県こども病院や千葉こどもとおとなの整形外科などの専門機関を速やかに紹介させていただきます。また乳幼児健診などで異常が認められた場合は、痛みなどの症状がなくても、気軽にご来院ください。

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小児整形外科

赤ちゃんは8カ月頃のはいはいに始まり、1歳前後には歩き出すようになります。成長に伴い、日常動作が変わってくるため、見られる疾患も成長の程度ごとに異なるのが特徴です。また、子どもは成長途中で骨の先端に軟骨が存在するため、剥離骨折も多く見られます。子どもの場合は手足の非対称や変形などが現れることもあるため、動きや姿勢などにも注意しなければいけません。できる限り正しい情報をしっかり親御様にお伝えし、不安を払拭した上で治療に臨んでいただけるよう努めています。

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こんな症状でお困りの方はご相談ください

  • 四六時中、体に何らかの痛みを感じる
  • 手足の動きや長さなど、左右で非対称がある
  • 足を引きずって歩くなど、歩き方がおかしい
  • 手足など、体の一部に変形がある

※3歳くらいからは成長痛を訴える子どもが出てきます。
朝起きて、昼間は元気に遊びますが、夜間だけ痛がる場合などは、成長痛の可能性が高いです。
特に心配する必要はありません。

主な疾患

先天性股関節脱臼/発育性股関節形成不全

概要

古くは先天性股関節脱臼という病名で知られてきましたが、周産期から生後1カ月頃のまだ関節が不安定な時期に脱臼することも多く、最近では臼蓋形成不全や亜脱臼を含めて、「発育性股関節形成不全」と呼ばれています。痛みなどの自覚症状がほぼなく、歩行開始後歩き方の異変で病気に気がつくケースも少なくありません。治療せずにいると、股関節の軟骨がすり減って変形してしまい、将来、変形性股関節を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。

治療法

先天性股関節脱臼の場合、月齢によって、治療法は異なります。疾患が一番見つかる時期である生後3~4カ月に診断された場合、リーメンビューゲルという専用の装具による治療を行います。これは股関節を常に90度以上曲げた状態で、赤ちゃんが足を動かしながら整復を期待する装具で約8割は改善が期待できます。しかし、それでも整復ができない場合は、次の手段として小児整形外科に対応している総合病院などで入院治療となります。
総合病院では下肢を引っ張って治療するけん引治療が一般的に行われます。3週間以上の入院が必要となりますので、ご家族との相談が必要です。 
けん引治療でも整復が困難な場合は観血的整復術の手術となりますが、現在では少なくなっています。股関節の整復後はそれで治療が終了というわけではなく、その後股関節が正常に成長するか、成長過程を経過観察することが必要です。

内反足

概要

1000人に1人が発症するといわれる内反足は、先天性の疾患です。生まれた直後から足とかかとが内向きに曲がっていて、内反・内転・凹足・尖足変形がみられます。そのまま放っておくと矯正が難しくなってしまうため、すぐに治療に取りかからなければいけません。なお、現時点において、内反足の根本的な原因はわかっていません。当科では内反足の治療には対応していませんので、速やかに専門の医療機関を紹介させていただきます。

X脚・O脚

概要

直立したときに両方の膝が外側に開いている状態をO脚、両方のくるぶしの間が離れている状態をX脚といいます。個人差がありますが、生まれてから1歳にかけてはO脚であることがほとんどです。2歳頃には真っすぐになり、3、4歳頃にはX脚になった上で、その後大人の脚の形へと成長していきます。しかし、例えば「1歳の時にO脚で、4歳になっても変わらない」という場合は、ビタミンD欠乏性である「くる病」、骨系統疾患など何らかの疾患が隠れていることもあります。自然に改善するO脚・X脚なのかを見極めるために、経過観察が必要です。

治療法

O脚・X脚を引き起こす原因が「生理的か、病的か」によって、対応は異なります。生理的な場合、自然に改善していくケースがほとんど。そのため、特別な治療や手術などは必要ありません。一方、くる病が原因に特定されたら、ビタミンDの投与などの治療を進めていくことになりますので小児科での治療が必要となります。

先天性筋性斜頸

概要

先天性筋性斜頸は、生まれながらの疾患です。首の左右にある胸鎖乳突筋(筋肉)の一方にこぶができ、常に首が左右どちらかに傾いた状態になります。生後4週間程度までこぶは大きく成長し、その後は徐々に小さくなりながら消えていくケースがほとんどです。しかし、こぶが消失せずに硬くなった結果、常に首が傾いた状態になると顔面の非対称につながる恐れもあります。

治療法

この病気が認められても多くの場合には1歳になるまでに自然に治ります。その間は、例えば右しか向いていない赤ちゃんには左から声をかけたり、左側に音が出るものなどを置いたりするなどして、左を向くように自然のうちにお父様・お母様が首の動きを促すような取り組みを行っていただきます。
1歳を過ぎて歩行開始後、斜頸位が残った場合には、顔面の非対称が起こる可能性もあります。症状の改善が見られない場合は、小学校入学前くらいまでに手術治療が必要となります。

単純性股関節炎

概要

単純性股関節炎は2歳から10歳くらいまでに、熱発はありませんが急に股関節から大腿部にかけて痛みを訴え、しばし歩行困難となる疾患です。原因はいまだ不明ですが、風邪などのウイルス感染、軽微な外傷などが関係しているといわれています。安静により数日から2週間くらいで自然軽快し特に後遺症も残しません。1カ月以上症状が継続する場合は他の股関節疾患(ペルテス病、若年性特発性関節炎)なども考えられますので、さらに精査の必要があります。